【小さな分譲地の家】伊藤明良一級建築士事務所
小さな分譲地の家~閉じすぎない間取り
世田谷の閑静な住宅街の中にできた25~26坪程度の新しい6区画分譲地のうち隣接する2区画の家づくりに携わらせて頂きました。この2棟はそれぞれ家族構成も設計期間も異なりますが、敷地が高台に位置する陽当り良好の地であること、そして隣地建物との適度な離隔距離を有する風致地区の規制とがつくる街並みにに惹かれて家づくりを決断されたお施主様でした。この計画は、工務店とのコラボレーション企画の一面もあり、建物外観はある程度仕様が決まっていたこともあり、大胆な建物配置や建物形状で積極的な採光や採風を取る計画には消極的でした。そこで、プランニングの段階では『閉じすぎない間取り』と窓の設えを重点に計画を進めていきました。
敷地に対して建築可能な床面積を積み重ねていくと3階建てまでが可能になります。住まいのゾーニングで2階にLDKを集約し、1階は水廻りとサービスルーム、3階は斜線制限や日影規制、許容容積の制限により小さな床面積になるので居室ひとつまたはバルコニーを配置することとしました。一般的な分譲建売住宅では、2階リビングは、採光採風を十分に受け止められる開放性を確保しながらも、一方では分譲地ならではの向かいの家同士(両隣同士)のプライバシーを確保しなければならないことから、どうしても中途半端な窓サイズが選択されがちです。この窓の選択はリビングの使われ方や生活シーンのイメージの欠如により成立するものと私は思います。一人暮らしでも家族世帯でもリビングの生活シーンは日々変化し無意識に記憶に刷り込まれるもので、その背景にある壁や窓は大きな存在だと思います。『閉じすぎない間取り』は日常生活の背景である壁や窓のレイアウトから考えた住まいとも言えます。
2棟の小さな分譲地の家は、2階リビングにFIX窓と道路に面する大きな窓を設えました。良好な陽当りを積極的に取り込みながら、外の景色がダイレクトに毎日の生活シーンに飛び込んでくることを期待しました。窓が意識されると、外の様子を感じられる、隣人を感じられる、、、といった作用が働いて住まいの使い方が内向的になりすぎないようにしたい。家づくりを決断したその土地への愛着とともに住まい方も日々愛着が湧くものであってほしいですね。グリーンや家具の選択、配置も住み手の工夫で色付けされるように。
竣工後毎年お会いするお施主様とはいつもこの大きな窓を眺めながら、大きな窓越しに見え隠れする近隣者の生活を意識しながら、互いに気遣いができる関係も生まれている様子を伺うことがきて喜ばしいかぎりです。プライバシーの問題が上がりますが、窓によるプライバシーは随時ブラインドやカーテンで調整しながら生活できますが、当然、後々窓をつけたり壁を後々取っ払うことは基本的には不可能です。だからこそ窓を意識することは大切です。
後日談、この2棟の完成後に同区画内のお住まいでもこの大きな窓の採用を検討したいとのお話があったようです。
スタディ模型(写真(左):配置俯瞰 写真(右):左がA棟(地上3階)、右がB棟(地下1階+地上3階))
完成時(写真奥がA棟,手前がB棟)
A棟 2階リビング
A棟 2階リビング
B棟 2階リビング(右手がFIX大窓)
B棟 2階リビング(窓から外の様子を見る)
B棟 2階リビング(FIX窓から外を眺める)
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「江戸Styleの家」オープンハウスのお知らせ 2024 年11月30日(土) @小泉拓也+栗原守
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