敷地の可能性を最大限に引き出す、木造で自由な空間構成を実現するための設計手法と、現在進行中のウッドショックから受ける影響 @七島幸之+佐野友美

家づくりをご検討中のお施主さん候補の方は、何かしら耳にされていると思いますが、2021年3月頃から、木造の住宅の柱や梁・土台など構造材の供給の逼迫、木材の価格高騰が続いており、「ウッドショック」と呼ばれています。

「ウッドショック」の原因については、コロナ禍に起因する北米の住宅ラッシュなどによる日本国内への木材輸入量減少などと言われており、ここで詳しく採り上げることは避けますが、何れにしても、住宅の骨格を成す資材の不足ですから、事態は深刻です。

photo by Brian Sawazaki Photography

私共の事務所では、都心の狭小敷地の木造3階建て住宅の設計依頼を受けることが多いのですが、この場合、高額の土地代金に見合うだけの家族の生活の場を捻出する為に、その敷地の有効活用、具体的に言うと、その敷地に建つ最大ボリュームの確保が、まず最初の検討事項になります。

そうやって確保した最大ボリュームの大枠のフレームの中、ご家族の要望に応じた生活の場を、立体的な場として構成することを検討していきます。

狭小敷地の「塔状」のボリュームの中に、「部屋」などの単位に囚われずに、いわば「自由な平面・自由な断面」を組み立てる発想ですが、これまで多くの狭小木造3階建て住宅の設計に携わってきた結果、今では、その時々に望まれる機能性・空間性に応じて自由に柱や梁を配置・構成し、キャンティレバーやスキップフロアを駆使して、空間の広がり・抜け・開放性を獲得する設計スタイルが定着してきました。

photo by Brian Sawazaki Photography

さて、少し長い前置きになってしまったのですが、「木造在来軸組工法」で、上記のような自由な設計を試みる場合の前提条件となるのが、以下の3点となります。

①建物の特殊性や難易度に応じて、適切な構造計算手法を駆使する構造設計
<許容応力度計算、3次元有限要素解析、立体フレーム弾性解析など>

②構造設計により導き出された必要強度を満たす、耐力壁部材・木材接合部ジョイント部材
 例)
・短耐力壁部材:ポラテック(株)/パルテノン
・短耐力壁部材:BXカネシン(株)/ベースセッター
・門型ラーメン:(株)ストローグ/Node.Rigid
・アゴ掛け接合金物 :(株)タツミ/テックワンP3
・高耐力中脚金物:BXカネシン(株)/高耐力柱脚金物45

③建物各部の柱・梁それぞれに必要とされる設計強度を十分に満足する構造用木材の供給体制
<梁幅105〜150、梁せい105〜600をカバーする大断面構造用集成材、LVL材など>

photo by アトリエハコ建築設計事務所

上記の3点の内、この度のウッドショックから直接大きな影響を受けるのは、当然ながら、上記③の構造部材の供給となります。

建物の内容に応じて、構造計算手法を駆使して、構造安全性を担保できる構造フレーム(柱・梁の構成)と各部材の仕様・サイズなどを決定しても、そこで求められる部材の供給を受けることが出来なければ、その設計はまさに「絵に描いた餅」になってしまいます。

また、構造設計で部材同士の接合部に必要な強度を満たす上記②のジョイント部材を選定しても、その部材が必要とする強度の木材が供給されなければ、やはりその設計が「絵に描いた餅」となってしまい、そのような状況になってしまうと、もはや構造設計が成立しません。

photo by アトリエハコ建築設計事務所

2021年3月頃にウッドショックについての報道が始まった時点では、憶測を含めた様々な報道などがあり、構造材の供給について具体的な影響がなかなか掴めなかったのですが、8月頃になって、ようやく日頃付き合いのある木材供給会社・プレカット会社各社から構造用木材の供給状況についてもう少し具体的な情報が入ってきました。

その内容の概略は、以下となります(2021年8月時点での情報です)。

・柱・梁とも、3.5寸(105mm)幅のみ供給可能
 <従来は供給可能であった4寸(120mm)幅材の供給が完全にストップ>
・梁せい390以下の梁は米松KD材のみ供給可能
 <WW集成E105-F300【対象異等級】が供給可能である会社もあり>
・梁せい420以上の梁はLVL材のみ供給可能
 <従来は梁用部材として一般的であった米松集成材・RW集成材の供給がほぼストップ>
・SPF(ツーバイ材全般)の供給がストップ

通常の規模の木造住宅では、上記の3.5寸(105mm)幅の木材が使用されるのが一般的ですが、そのような場合でも、建物の四隅の柱はワンサイズアップして4寸(120mm)角の通し柱とするのが、従来から構造計画の定石とされてきました。
また、これまでは、大きな部屋を作るために柱間距離を大きくする場合は、そのスパンに応じて梁の梁せいを大きくしたり強度の高い集成材を用いたり、柱に作用するより大きな軸力を支えるために大きな断面(4寸角や扁平壁柱など)の柱を用いるなどの構造設計上の工夫により、計画を成り立たせてきました。

しかし、上に記した現在のウッドショックの最中における構造用木材供給状況においては、これまでと同じ手法では問題を解決できません。

今後は、その時々での木材の供給状況を視野に入れた、より緻密で精度の高い設計が求められる状況になってきたと言えると思います。

ウッドショックの最中での実施設計ケーススタディー 構造部材の選択肢が狭まった木材の供給状況における構造検討 @七島幸之+佐野友美

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七島幸之 + 佐野友美 ななしまゆきのぶ さのともみ

アトリエハコ建築設計事務所

詩的にシンプルな、それでいてユーモラスな建築をつくりたいと考えています。 要素を削ぎ落とすのではなく、生活の為の設えがさりげない在り方で生活を彩る、シンプルな家。 姿カタチや空間の佇まいに住まい手の個性が垣間見えるような、唯一無二の「生活の容器」を自由で柔軟な発想で追求します。

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