明るく開放的な階段室をつくるためのひと工夫 @滝川淳+標由理

今週のリレーブログを担当します「コネクト一級建築士事務所」の滝川淳+標由理です。

長屋のように南北に長い敷地に立つ家。真ん中に坪庭を設けて、光と風の抜ける家としています。今日のお話はそんな坪庭に面した明るく開放的な階段室の作り方について。

 

「明るい階段にしたい」。以前の家の階段室が暗かったため、階段をとにかく明るくしたいというのがご夫婦のたっての希望でした。そこで階段室を先ほどの坪庭を眺めながら登れるような場所に置いて、できるだけ多くの窓を設けるようなプランニングを提案しました。

坪庭に面した階段室のメリットは、坪庭だけあって、お隣さんからに視線を気にすることなく、思い切り開放的な階段室が作れそうだったところ。

逆にデメリットは、階段室を置く場所。間口の狭い敷地のため、坪庭に面することができるのは、南北それぞれ1室のみ。坪庭のさらに南側にある部屋に光と風を取り込みたいので、南向きの階段室にしてしまうとせっかく坪庭に面していた南側の部屋が、階段室があることで暗くなってしまう。よって必然的に北向きの階段室にならざるを得ません。

階段室は普通の部屋と違って、2層吹き抜けの高さがあります。明るくしたいとはいえ、北側の縦に長いガラス面は、コールドドラフトといって、冬場に冷気がサーッと吹き下ろす場所になりやすい。家全体の断熱性のを考えたら、本当はご法度な開口部です。そこで寒さ対策は万全にすべし、というのが課題になりました。

さて、設計の初期段階から大まかな方針が決まっていたので、建物の構造的にも工夫を盛り込みました。写真を見ていただくとわかりますが、2階の床にあたる部分の梁を無くしています。代わりに踊り場の高さに梁を下げることとしました。実はこれは簡単なことではなくて、専門用語で床剛性を別の場所で確保し、構造計算が成立するようにしているのです。

断熱性能を犠牲にしないよう、樹脂サッシとLow-E複層ガラスふんだんに使って、サッシのカタログを睨めっこしながら、製作可能サイズと踊り場高さ、階段などの寸法調整を重ねてできたのがこの階段室です。

 

一番大きなガラスのサイズが、縦2.37m×横1.62m。開閉できるサッシは他の場所に十分あったので、ここはあえてはめ殺しとして少しでもガラス面を大きくしました。

製作可能なサッシ高さの関係で、梁がもう一本必要だったので、こちらは2階内部の手すり高さに揃えました。

サッシを使わずに、ガラスを直接躯体に固定する方法もありますが、コールドドラフトで結露する可能性がゼロとは言えません。安全を見て、サッシを使い、結露水を受け止めてくれることを期待しました。

写真ではわかりにくいですが、梁部分の外部側は外壁材を細かく貼りつけ、内部はグルっと三面プラスターボードを貼ってペンキで仕上げてあります。手間のかかる、職人さん泣かせな工事だったでしょう。図面を書くのは簡単ですが、それも実現しようと骨を折ってくれる職人さんあっての話。この場を借りてお礼申し上げます。

大きなはめ殺しガラス、しかも2階の高さに窓があるような場合は、私たちはガラス拭きが難しいことをあらかじめ建主に説明するようにしています。開閉できるサッシの場合は何とか外側も拭ける構造になっていますが、このガラスはそれも不可能です。説明を聞いたご主人は、長〜いモップを用意して自分で清掃するから大丈夫!と言っていただきました。

最後にもう一つ。階段室の奥、2階の壁にも腰高のガラス窓があります。ここはダイニングテーブルに座った時に坪庭を見下ろすための腰窓。ある時、模型を作って階段室の説明をしていたところ、「2階のダイニングからも坪庭を見下ろしたい」とご要望をいただきました。要望通り、もしかしたらそれを超える階段室が出来あがりそうなことに、ワクワク感が止まらなかったのだと想像します。

坪庭に面する階段、廊下の窓にはカーテンやブラインドは一切不要なように目隠しを確保しています。家に帰ってきた夜、1階の個室からごはんを食べに上がる時、いつでも気分のリフレッシュする階段ができたのではないでしょうか。

 

そんなこんなで実現したのがこの開放的な階段室、というわけです。書いてみると、たった一つの階段室でも建主の要望、敷地の条件、施工の大変さなど、多くの物語を経てここに出来上がっているのです。そのおかげで同じお金を使っても納得感、達成感が違うものができあがるのが建築家との家づくりの醍醐味です。いちど体験してみませんか。

著者情報

滝川 淳 + 標 由理滝川 淳 + 標 由理

滝川 淳 + 標 由理 たきかわ あつし

コネクト 一級建築士事務所

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