木造住宅の基礎 と 床の高さ (続編)@小林眞人

『木造住宅の基礎と床の高さ』は 2029年3月6日に掲載以降かなりの方にご覧頂いており、それについてのご質問なども頂いておりました。

  • その記事を見るには ⇒ https://kenchikuka31.net/22313

 

今回はそれを踏まえて 少し内容の追記の様な形で書かせて頂きます。

現在でも 基準法では木造住宅の基礎の高さは接する地面から30センチ以上、瑕疵保証や融資の規定などでは40センチ以上を求められるケースが多いのは変わっておらず、
この高さの規定は木造住宅の土台部分を地面から上げる事で、雨などから、家の要である土台を守ることを主旨に設けられています。

※図版の赤印の部分が「基礎の高さ」 になります。

この図版の場合床下に約45センチのスペースがありますから、人が床下に入って排水管のメンテナンスや点検等が可能になります。

 

ただ、床下に横断する基礎が存在するので、基礎により分割されたエリアすべてに点検口が必要になってしまうので、梁に人通孔(文字通り 人が通り抜けられるアナ)を設けて床下点検口が少なくて済む様に考えます。

人通孔は人が通り抜ける寸法より少し大きくすることで、基礎を痛めず配管を通す事も可能になります。

 

私の場合は 床下点検口は納戸や収納部分に設けて 日常的な視覚や足ざわりに邪魔にならない様にしています。

上記の写真で下に基礎がある部分は土台、無い部分が大引といって土台は基礎を通じて建物を支え、耐震性能を得るために重要な部分になり大引は床そのものを支えるために必要となります。

大引は近年は金属支柱(床束)により支えるケースが一般的になりました。

※赤い部分が床束です

前回、バリアフリーや庭との一体化などのために外周の基礎高を保ったまま、内部床を下げる方法もご紹介しましたが、

そのときに内部床をどう造るのか というご質問もありました。


※内部床を下げるケース

ここはコンクリート造の床構成と同じ事で、従来の木材で根太を組む方法か、フリーフロアといって金属脚によって床を組む方法とが一般的です。

フリーフロアは床下4〜5センチから1メートル以上のものまで多種存在し、床下には概ね45〜60センチピッチでの脚しか無いので、根太組に比べ、床下配管や配線・点検がしやすいというメリットがあります。
また、フリーフロアは置き並べているものなので、いざという時に一部外したり撤去したりが根太組にくらべ簡易にできるというメリットも大きいでしょう。

脚の部分に防振や防音の工夫をされたシステムもあるので、マンションやビルの場合、一般的な仕様工法になっています。

※フリーフロアのイメージ


※脚がネジ式で高さの微調整が行なえます

前回は、内部床を下げる場合床下に人が入れる空間は無くなる事と床レベルが下がることとを目的・価値観で選択する というお話をしましたが、どうしてもその両方を満たしたいという事例のご紹介を致します。

上記の図版をご覧頂くとベタ基礎のレベルは外部の地盤から5センチ上げていることがお判り頂けると思います。
これは家の床下を周囲の地盤より少しでも上げておくことで、何らかの原因で

の浸水に対しても防水上のトラブルを回避できるからなのですが、床を下げ、かつ床下のスペースを取るためにはこのベタ基礎のレベルを地盤面より下げる事で可能になります。
そのままでは下げた部分に漏水し水が溜まる危険性があるので、それを防ぐために基礎と土間スラブを防水コンクリートで造ります。

鉄筋コンクリート構造での地下工事をする場合、防水方法がいくつかあるのですが、コンクリートそのものに薬剤を混ぜて打設する事で防水性能を得る という方法があり、その防水コンクリートを使用します。

この土間スラブの位置がどんどん下がっていくと、半地下あるいは地下になるわけですから実はそんなに特殊な事でもないのですが、半地下・地下ほどではないにしろ、土を掘り、掘った土を搬出し、防水する といったコストがかかりますから、他の事と同様、目的・価値とコストとを照らしあわせて判断する必要がありますが、ひとつの選択肢としてお考えください。

著者情報

小林 眞人小林 眞人

小林 眞人 こばやし まひと

株式会社 小林真人建築アトリエ

『バランス感』と『素材感』を大切にした建築を心がけています。 全体とディテール、都市との関係、実用と芸術・・・ シチュエーションに応じて取るべきバランス点を見極めたいという思いです。

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