続・今どきの住宅の玄関廻りで考えたいアレコレ @石井正博+近藤民子
今週の “リレーブログ” を担当します、設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。
住宅の玄関には、住まいの第一印象を良くするための工夫にはじまり、清掃性や防犯性、靴やコートだけでなくアウトドア用品や趣味の自転車などの大容量の収納スペース、靴ぬぎスペースの幅や床段差の処理方法、考えるべきポイントが詰まっています。
今回のリレーブログでは、前回に続き玄関廻りの間取りがわかる図面と写真で、弊所の事例をご紹介いたします。家づくりやリノベーションにおいて、玄関廻りのプランニングやデザイン、機能を考えるときのご参考になりましたら幸いです。
【6】2WAY動線の手洗い付き玄関
住宅の玄関を2WAY動線にすると行き止まりがなくなり、買い物や荷物の搬入が効率的になり、かつ、お客様用と家族用の靴脱ぎ位置を分けることができるため、玄関をスッキリ保ちやすくなります。
この住宅では、玄関からリビングへ至るメインの動線(お客様用)と、玄関からシューズインクローク(SIC)を経由してパントリーの横を通ってキッチンに至るサブの動線(家族用)を設けています。
北側道路から緩やかなスロープでアプローチしたあと90度方向を変えて、ステップを浮かした階段を上がると屋根のかかる玄関ポーチです。
ネットでの買い物が増えているため、ポーチには宅配ボックスを設置しています。
木製ドアを開けて玄関に入ると、横に手洗いコーナーがあり、前面の壁にはお気に入りのカエルなどの絵柄の入ったタイルを貼っています。
大切な自転車の置き場も兼ねて、靴や傘の他に外遊びの道具、自転車整備道具なども置ける可動式の棚を設けた大容量のシューズインクローク(SIC)。
奥の入り口はキッチンにつながり、途中にはパントリーがあるので、買い物した荷物はこちらから運び込むと効率的で便利です。
途中には書斎の入り口、個室のある2階への階段もあるので、家族は主にこちらから出入りします。
【7】シューズインクロークと下足入れのあるコンパクト玄関
玄関に広いスペースを避けない場合でも、工夫によって収納量を確保したコンパクトで使いやすい玄関にすることもできます。
横付けの駐車スペースの上には屋根がかかり、シューズクローク(SIC)にある荷物も雨に濡れることなく車への出し入れを行うことができ、普段使いの電動自転車も玄関ドア横に置けるように細かく寸法を調整して計画しています。
[左]玄関には普段使いの靴を収納する天井までの下足入れを造り付け。好きなものや季節ものを飾るニッチとお気に入りの照明がお客様を迎えます。
[右]天井をできるだけ高くして収納量を確保。天井に設けたパイプには2台の自転車を吊るします。棚には長いものも横にして収納できるように、細い柱で棚板を支えています。黒い壁は好きな場所にフックをつけて吊るせる穴あきの合板です。
>>テラスと暮らすスキップフロアの家
【8】メイン玄関と子供とペット用のサブ玄関
玄関をいつも綺麗に保ちたいというご要望、敷地条件とプランの関係から、メインの玄関とは別に4人の子供とペット用のサブの玄関を設けた事例です。
メインの玄関には、手洗いを組み込んだ壁面収納を設け、靴や傘、コートなどをスッキリと収納しています。
サブ玄関は、サッカーで泥んこになって帰ってくる子供たち、愛犬の散歩の出入りなどで使い、学校のランドセルやカバン、サッカーやアウトドアの道具もここに置きます。
オリジナルで製作したスチールの玄関扉を開けて玄関に入ると、正面の地窓を通して視線が中庭まで延びます。地窓上部の壁にはお客様を迎えるアートが飾られます。床は上下足とも同じタイル貼りで仕上げを統一し、段差部分には間接照明を入れています。
[左]お気に入りのタイルを貼った手洗いコーナーで、ペーパータオルは鏡裏に仕込まれています。
[右]来客用のスリッパも表に出ないように扉の裏に仕舞います。
>>都会のオアシス中庭のある家
【9】カフェになる玄関
玄関は将来カフェにもできる広い土間空間で、中央にキッチンがあり、その奥は一休みしたり宿泊にも対応できる、掘り炬燵のある小上がりの和室になっています。
家族はシューズクローク(SIC)側から上がるコンパクトな2WAY動線で、SICの中には下足棚とともに手洗いも設置しています。
将来、夢であるカフェも開けるカウンターキッチンのある土間空間。家族の記念日にはご主人がケーキを焼いて家族に振舞います。
タイル貼りの土間には冬の寒さ対策に床暖房を敷設、キッチン背面に本格的なお菓子づくりのできるバッケンオーブンや家電置き場を設けています。独立性の高い和室とキッチンのある土間空間は、海外からのホームステイの学生の受け入れにも対応しやすい間取りになっています。
[左]SIC内には手洗器も用意 郵便物は脇の扉から取り出す
[右]玄関脇にあるSIC 家族の玄関で下足入れやコート掛けを造作
【10】玄関とシューズクロークをカーテンで仕切る広々玄関
玄関に靴や傘などを収納する、いわゆる下足入れを造り付けるのではなく、靴や傘以外の雑多で多様なものを仕舞えるシューズクロークを玄関の横に設けるプランが多くなっています。
この住宅では玄関とシューズクロークの間の壁をなくして、普段は広々した一体の空間として使い、来客時のみカーテンで仕切ってSIC側を隠せるようにしています。
[左]玄関ドアは木製で、床は炭モルタル仕上げ。下足部分からは2段の床でゆったりと1階の床レベルに上がります。
[右]カーテンは手でサッと開け閉めできるように上部のパイプに吊るします。ネット購入品や田舎から送られてくる野菜の梱包に使われたダンボールは、ここに一時保管しておき資源ゴミの日にまとめて出します。
【11】スキーや自転車を整備でき和室も隣接する広々土間玄関
玄関を人の出入りや物の出し入れだけに使うのではなく、趣味のスキー道具の手入れなどの作業スペースとしても使えるように、広々とした土間玄関の事例です。
ご夫婦は二人とも、登山やスキー、自転車などのアウトドアを楽しまれるため、ガレージから雨に濡れずに道具類を直接車に積み込めるように、土足で使える納戸側にも玄関入り口とは別に入り口を設けています。土間と一体で使える和室は、登山やスキーの仲間たちの前泊用のゲストルームとなり、着物を着たりするときにも使います。
[左]ガレージとつながる土足の納戸は、土間玄関へも直接出入りできます。
[右]和室は両引き戸を開けると土間玄関と一体となり、作業中に腰掛けて休むこともできます。猫間障子を開けると庭の景色も見え、お茶会にも対応できるように炉が切られています。
[左]靴ぬぎ場所は来客用と家族用が分かれていて、家族用にはコート掛けと大容量の棚を造り付け。
[右]土間玄関の床は玉砂利洗い出し仕上げで、スキーや自転車の手入れをするため、腰壁には傷にも強いメラミン化粧板を貼っています。
前回と今回のリレーブログでは、2回に分けて住宅の玄関廻りについて書いてきました。
これからの家づくりやリノベーションを考えるときに、少しでも参考になりましたら幸いです。
>>今どきの住宅の玄関廻りで考えたいアレコレ @石井正博+近藤民子
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設計事務所アーキプレイスでは、石井正博と近藤民子の男女ペアの視点を活かして、暮らし易さ(光と風、家事動線、収納など)、性能(安全性、断熱性、防犯性、耐久性など)、デザインのバランスのとれた心地よい住まいをご提案しています。
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