変形地でも快適に暮らす_細長変形地の二世帯コートハウスを図面で解説3 @石井正博+近藤民子
今週の “リレーブログ” を担当しています設計事務所アーキプレイスの石井正博+近藤民子です。
前回は、道路斜線や軒高制限といった高さ条件を踏まえながら組み立てた断面計画についてご紹介しました。
今回は、建て主世帯のメインフロアとなる2階のプランを詳しく見ていきます。
1階を親世帯の住まいとし、建て主世帯の生活空間を2階・3階へと持ち上げる構成としたことで、光や風の取り込み方、視線の抜け、そして二世帯の距離感に新たな可能性が生まれました。
細長い敷地形状と、途中に生まれる35cmのレベル差。
それらをどのように空間の豊かさへと転換したのか――。
2階は、デッキテラスを中心に北側と南側へと機能を振り分けた構成としています。
北側にはLDKを配置。DK部分はちょうどガレージの上部にあたり、構造条件を整理しながら天井高2.55mを確保しました。限られた高さ条件の中でも、できるだけ伸びやかさを感じられるよう意図しています。
DKから2段上がると、階段室とワークコーナーが現れ、その奥にリビングが広がります。このわずかな段差によって空間に緩やかな領域性が生まれ、細長いワンフロアに奥行きとリズムを与えています。
リビングの南側にはデッキテラスが広がり、室内と屋外が連続する開放的な構成です。そしてテラスを渡った先、離れのような位置に完全防音の音楽室を設けました。
デッキテラスを介してつながることで、日常の生活空間と音楽に没頭する空間とが、適度な距離感を保ちながら共存するプランとなっています。
左の写真
1階から階段を上がり、2階に到達して振り返ったときの景色です。
ふたつの階段は動線をコンパクトにまとめるために90度振って配置しています。限られたスペースの中で効率よく納めながら、視線が折れ曲がることで空間に変化が生まれ、上り下りの体験そのものが印象的なシーンとなるよう計画しました。
右の写真
天井高2.55mを確保したダイニングキッチンです。道路側には大きな窓を設け、都市の密集地でありながらも開放感を感じられる明るい空間としています。音楽室に置かれているグランドピアノは、この道路側の窓から搬入しました。
左手の壁面収納は、変形敷地の形状をそのまま活かし、奥行きが場所によって変化するつくりとしています。敷地のクセを無理に整えるのではなく、空間の個性として取り込んだ収納計画です。

階段の途中から、リビングを見下ろした風景です。
愛用の家具を配置したコンパクトな空間ですが、デッキテラスへとつながる大きな掃き出し窓に加え、床から天井まで伸びる縦長の窓を設けることで、たっぷりと光が差し込みます。
内と外がゆるやかに連続し、視線も抜けていくため、実際の面積以上の広がりを感じられる、明るく居心地のよいリビングとなっています
デッキテラスを渡った先にある、離れのような音楽室です。内部は本格的な防音仕様としており、周囲を気にすることなく演奏に集中できる環境を整えました。
LDKから少し距離があるため、「子どもが練習に行かなくなるのでは」と当初は心配もありました。しかし実際には、“わざわざ外に出て向かう”という行為そのものが気持ちの切り替えになっているようです。
日常空間から一歩離れた特別な場所だからこそ、自然とやる気のスイッチが入り、集中して練習に取り組めていると、嬉しいお言葉をいただいています。
リビングから一段下がったダイニングキッチン方向を見た風景です。
床レベルに変化をつけることで、視線に抑揚が生まれ、実際の寸法以上に奥行きのある広がりを感じられます。天井は板張りとし、空間全体をやわらかく包み込むことで、一体感をより強めています。
細長いプランでは中央部が暗くなりがちですが、階段室に大きな窓を設けることで安定した明るさを確保しました。この光は2階だけでなく、吹き抜けを通して1階の玄関にも届き、住まい全体にやわらかな光を行き渡らせています。
2階では、家族が集う場としての広がりと、外部へと開く視線の抜けを大切にしながら、細長い敷地の中に伸びやかなワンフロアを実現しました。
次回(4回目)は、よりプライベートな空間となる3階の寝室や子供室、そしてロフトや屋上テラスまで含め、立体的に展開する住まいの全体像を、プランと写真を交えてご紹介していきます。
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