JEAN PROUVE’ 展_2022.7.16-10.16 @ 石川 利治
今週のリレーブログを担当する石川利治です。
ここ数年はコロナ禍のため美術館巡りを控えておりましたが、外出制限も緩和されて来たため、少しずつ再開することにいたしました。今回は7/16~10/16まで東京都現代美術館で行われていました「JEAN PROUVE’展 椅子から建築まで」の訪問記です。
JEAN PROUVE’(ジャン・プルーヴェ)は20世紀前半から活躍したフランスの作家です。「作家」というよりは「職人」と呼んだ方が良いかもしれませんが、工房で製作の現場に携わりながら、家具から建築まで全てのものを手がけており、自らを「構築家」と呼んでいたそうです。
日本ではビンテージ家具のリペア品やリプロダクト製品などを入手する事ができ、特に鉄、ガラス、プレス木材を多用することから、建築というよりは工業製品を中心に活躍していた印象がありました。2005年に神奈川県立近代美術館旧鎌倉館(現在は鎌倉文華館鶴岡ミュージアム)で展覧会があった折に屋外に展示されていた建物外装のパーツを見た時に、この様な物も作るのか・・・と少し驚いた記憶があるのですが、標準化されたパーツにバリエーションを持たせながら機能を持たせてゆく製作アプローチは一貫したものがあり、今回の展覧会で、改めてその感想を深めた次第です。
展示はその内容、ボリュームとも非常に充実しており、深く掘り下げた作家へのアプローチと共に、とても興味深く拝見しました。家具のパートでは代表作の「スタンダードチェア」のバリエーションやパーツ構成、内部構造なども詳細に展示されておりました。戦時中の鉄不足によって木材にパーツを置き換えながらも基本的なシルエットは変わらない機能美と、構造力学を元に造形を生み出した感性と祖型への愛着を感じました。
スタンダードチェア 木フレームバージョンの接合部ディテール
スタンダードチェア 座面プレス板の取付ディテール
基本フレームの形状は構造力学に基づいておりますが、力が大きく掛かる部分の部材はボリュームを持たせ、先端に向けて削いでゆく事によって強弱のメリハリを持たせるのが特徴的です。この考え方は家具から建築まで一貫しており、ある種の合理性に基づいておりますが、本人の好みによる所が大きいのかもしれません。部材の細さといった点では、もう少し細くできるのでは無いかと感じる部分もあるのですが、形態と同じ位に考慮されているのが工業製品としての製作の容易さや材料の軽減といった事かもしれません。例えば鉄に厚みを持たせれば、より細くする事が可能なのですが、板厚を薄くすることによって汎用の板材を使うことや、加工が楽になるなど、職人としてのものづくりが独特なバランス感覚を持たせているのかもしれません。
6×6 組立式住宅 大人が6時間で組立られる家として開発された
6×6 組立式住宅内観 スタンダードチェアとの調和が感じられる
6×6 組立式住宅 接合部
展覧会では実物大の建築作品も展示されていました。いずれも可搬性に優れ、組立・解体されることを前提にした構成になった物で、工業製品の発想が活かされていることを間近で見ることができました。それと同時に、その再現性の思想が、現代の我々にも示された事が非常に感慨深いものがあります。
建築フレームと家具フレーム 鉄板の薄さに驚かされる
外装のバリエーション 規格寸法に則った構成でパーツの選択が可能
カーテンウォールの考え方がすでに確立されている
カーテンウォール開口部の金物ディテール
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