注文住宅の床天井階高さに段差をつけるスキップフロアの楽しい家の設計 @清水禎士+清水梨保子
いちご大福から始まり、白いたいやき、生キャラメルといった、今まであるお菓子のベースを変えずに、視点を変えただけで生まれ変わるお菓子をよく見かけ、魅力の再発見も手伝ってか結構な人気があると聞きます。これと同じように人、家族が住む一般的な2階建て住宅にもちょっとしたエッセンスを加えることで、今までとは違う体験が出来る住宅についてお話しさせていただきます。
<住宅は広さで決める?大きさで決める?>
私は住宅設計をする際、まず、敷地環境の把握と施主の要望から取りかかり、家族構成、それぞれの趣味や好み、生活スタイルを質問をしながら詰めて行きます。お施主さんたちは総じて平面図を見ながら部屋の配置、広さ(面積)で要望を述べたりして下さいます。時には自分なりにプランニングをしてきたりして、私たちを驚かせてくれる方もいらっしゃいますが…。ただ、そこには立体的な構成についても目を行き届く方は皆無で、良くて吹抜けの話をされる程度がほとんどでした。日本の住宅の考え方の基本がLDK神話からきているのか、古くからの平屋の住宅が主体であった暮らしからなのか。
私たち設計者は常に立体的な視点で考えており、私もご多分に漏れず立体的な視点で要望を具現化していきます。土地の広さとそこにかかる容積率、道路斜線、北側斜線などの制限から最大のボリュームを見つけだし、デザインを整えイメージを決めます。都心ではよほど恵まれた敷地か、施主の強い希望が無い限り平屋建ては考えられません。このボリュームと階層で希望の広さを確保してゆきます。
<空間の広さと大きさを同時に考える>
ここで、気になるのが階層による空間の分割です。ただでさえ都心の限られた敷地内で階層を区切るのは、自ら空間を限定してしまう非常にもったいない行為ではないかと。
そこで、私は上階の床、例えば2階建てならば2階の床に「段差」を付けます。いわゆるスキップフロアというものです。「段差」の大きさは、計画内容によってまちまちですが、概ね1mくらいを目安に考えます。スキップフロアを作る事でどういう変化があるというと、まず、下階に天井高の違う空間が出来る。次に「段差」により低い床と高い床の間に隙間ができ上下階の空間がつながる。床の厚みは木造で40㎝前後、鉄骨造で30㎝前後、コンクリート造で20㎝前後、なので、この床の厚みと「段差」の大きさの差が隙間の大きさになります。また、隙間を意識せず舞台のように平らな床に段差だけを作り床下収納を作る事もあります。(住宅の用途に限ります。)
<スキップフロアは楽しい>
スキップフロアによる大きな変化を述べただけですが、この変化が実に様々な効果を生み出し、施主の生活スタイル、家族構成、敷地環境などに対して的確な答えを出してくれます。
さらに特筆すべきは、スキップフロアは階層を作る床に「段差」があるだけで、レベルの違う床がいくつあろうとも2階建は2階建と解釈される事です。一般的な大きさの木造2階建住宅は建築基準法上、比較的容易な法的制限で建てられ、建設コストも特別にかかることはありません。一般的な木造2階建と同じ感覚で計画しても、2階建て以上の空間体験が可能になります。
スキップフロアは平面的な広さだけでなく、立体的な動きや空間のメリハリを生み出し、日常生活にちょっとした楽しみを与えてくれます。また、階層をつなげると建物全体がひとつの空間になり、たとえば小さな子供がいる家族など空間のつながりが家族のつながりとリンクし、家にいる家族みんながそれぞれの気配を感じられる理想的な空間構成となるでしょう。
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