家を建てる時の土地探しのポイント15 @石井正博+近藤民子

家と建てる時に土地探しから家づくりをスタートさせる方のための、土地探しのポイントをまとめてみます。

1.住みたい家のイメージを思い描く 家を建てるとしたら、どんな生活をしたいのか、思い浮かべてみましょう。最初からはっきりとした将来の住まいのイメージを描ける人はいませんが、今まで暮らしてきた住まいや、お気に入りの場所、気持ちよかった街やお店の雰囲気などを手がかりとして、土地探しの前に住みたい家のイメージをまずは思い描いてみましょう。

2.土地の相場をつかむ 土地の価格には、実勢価格、公示価格、基準地価、路線価、固定資産税評価額という5つの種類があります。その内実際に市場で取引されている価格が実勢価格です。購入を検討しているエリアの土地情報をネット、チラシ、不動産屋さん巡りなどで沢山集め、早めに土地の相場をつかみましょう。

3.敷地を見る目を養う 土地探しでは、ネット情報や不動産チラシばかり見ていては、敷地を見る目を養うことはできません。必ず現地に立って、五感を働かせてその場の雰囲気を感じてみましょう。実際の暮らしをイメージしてみるとチラシでは分からなかったメリット・デメリットが見えてきます。土地にも人間と同じ個性があることが、分かってくるはずです。

4.信頼できる専門家を早めに見つける 土地購入には多くの専門知識が不可欠です。基礎的なことだけでも、はじめての方には難しいことが多いので、信頼できる建築の専門家を早めに見つけて、アドバイスを受けながら進めることも有効です。

5.土地探しは建築計画と同時進行が理想 土地購入後に、「イメージした建物が建たなかった」「想定外の費用がかかった」ということを避けるために、土地購入前に、おおまかでもよいので建物プランと資金計画の検証ができれば安心です。

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設計事務所アーキプレイスでも、土地探し時点から相談を受ける場合があります。住まいのご希望が叶えられそうな土地かどうか、設計者から見てその土地のメリット・デメリットをアドバイスしています。写真の住宅『スキップする家』は、南側道路よりも日当りが悪くなるという理由から、割安な北側道路でしたが、断面を工夫することで光が十分に入る住まいが実現しました。

6.用途地域などの確認 国土は、都市計画区域か都市計画区域外に区分されています。都市計画区域は、さらに市街化区域か市街化調整区域に分けられます。市街化調整区域には例外的な場合を除いて、家を建てることができません。また、土地には都市計画法により12種類の用途地域の区分けがあり、これによって建てられる建物の用途、高さ、面積などの条件が決められています。

7.建てられる面積の条件 その土地に建てられる建物の面積は、基本的には容積率、建ぺい率の条件によって変わります。容積率(床面積/敷地面積)で延床面積の根拠になり、建ぺい率(建築面積/敷地面積)は建築面積を決める根拠になります。また、前面道路の幅も容積率に制限を与えるので注意が必要です。

8.建てられる高さの条件 土地には道路斜線、隣地斜線、北側斜線などによって、用途地域ごとに建てられる高さの規制があります。また、高度斜線や日影規制のほか、自治体独自の規制を設けているところもあり注意が必要です。

9.道路の条件(接道条件) 建物を建築するには、その土地が2m以上の長さ分、道路に接している必要があります。また、前面道路の幅が4m未満の場合は、建築の際にセットバック(敷地を道路に提供)することが必要です。さらに、道路には公道と私道があり、私道の場合はそこに埋設されている給排水管を実際に使えるかどうかも調べる必要があります。

10防火・耐火の条件 敷地が防火地域なのか、準防火地域なのか、それ以外の地域なのか調べましょう。地域ごとの防耐火の規制により、建てられる用途・構造・規模が変わってきます。特に木造の場合には、耐火建築物や準耐火建築物とすることが求められるか否が、計画の自由度やコストに大きく影響します。

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熱い思いを持ったクライアントと一緒に、農地転用や開発許可などの手続きに数年をかけ、市街化調整区域に完成させた住宅『ときどき電車の見える家

11.引込み工事の確認 土地探しでは、給排水、ガスといったインフラが、敷地内まで引込まれているかどうかの確認が必要です。引込み工事が済んでいない場合や、引込まれていても管径が13mmと小さいなどで引替えが必要な場合には、本管のある道路までの距離に応じた工事費が別途必要になります。

12.古家の有無・解体費用の目安 土地の引き渡し条件には古家が建ったままの引き渡しか、更地引き渡しの2種類があります。古家が建ったままの引き渡しの場合、解体費用が別途必要になります。 解体費用の目安は、木造4万円/坪鉄骨造6万円/坪鉄筋コンクリート造8万/坪程度ですが、立地条件によって異なります。庭の樹木や塀等の撤去費用なども想定しておく必要があります。

13.隣地と高低差のある土地の注意点 購入予定の土地が隣地より高いレベルにある場合、現状地盤にかける荷重の負担を少なくするために杭を打つ、深基礎とするなどの対策が必要となる場合があります。 逆に、購入予定の土地が2m以上低いレベルにある場合、よう壁の新設をする、一定範囲内の居室を鉄筋コンクリート造にする等の対策を求められる場合があります。いずれも各自治体の条例の確認が必要です。

14.地盤の強さの確認 土地探しではその土地の地盤の強さも確認しましょう。軟弱地盤の場合は地盤改良が必要となり、別途費用が必要になります。池・河川・海の近くや、地名に水に関する漢字を含んでいる場合は、土地が緩い可能性があります。傾斜地の場合は、切土か盛土かによってある程度の判断がつきます。 地盤については、国土交通省の「国土地盤情報検索サイト(KuniJiban)」や「ハザードマップ」も参考になります。近隣地盤データを自治体窓口にて入手し、建築家などに見てもらうという方法もあります。

15.建築条件付きか、そうでないかの確認 土地売買には「建築条件付き」か「建築条件無し」の2種類があります。「建築条件付き」の場合は一定期間内に、指定建設業者と工事請負契約をすることが条件となります。計画や条件の希望が叶っているかどうか、よく確認しましょう。また、中には「建築条件を外せる土地」もあるので確認しましょう。

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近隣商業地域の鉄骨造3階建て住宅『白山の家』ポーチと一体的に使える1階土間スペースは、お祭りの時にはご近所の人たちに開放されます。 この敷地の給水管は、調べると隣地の土中を通って引込まれていたため、給水管の撤去・引替えが必要でした。

最後に 土地探しからはじめる家づくり(家を建てる時の土地探しのポイント)のまとめです。

家づくりの成功には、土地探しの成功が欠かせません。なぜなら、同じ家づくりの予算でも、土地をいくらで購入するかによって、建物にかけられる予算が決まり、家づくりの依頼先や方向性が大きく変わってくるからです。また、地盤改良やインフラ整備に思わぬ費用がかかり、希望する広さの住まいが建たなくなることもあるからです。
土地の購入には仲介手数料、司法書士報酬、土地購入ローン融資手数料、各種税金などが必要になります。手数料や報酬を含めた【土地+建物】の資金計画を前もって想定しておくのが安全な進め方です。
私たちの設計事務所に設計相談にこられる方達の中にも、土地購入に想定外の費用をかけてしまい、夢に描いていた自分たちの家づくりを、あきらめざるを得なくなった方がおられます。土地の売り買いを専門としている不動産業者さんの土地の見方と、建築設計を専門としている私たち建築家の土地の見方は一致しません。家づくりを目的とした土地探しには、特に、家づくりの専門家である建築家のアドバイスがとても有効だと感じています。
土地探しにはかなりの知識が必要で、かつ、慎重さも求められます。しかし一方で、条件のよい土地ほど先に売れてしまう可能性があるので、検討・判断をスピーディーに進めていかなくてはならい難しさがあります。
土地探しをはじめる前に、この「リレーブログ」で書いた「土地探しのポイント15」を頭にいれて、土地探しをはじめてみてださい。土地情報が出たときに誰よりも素早く行動するために、希望の住まいが実現できる土地と出会うために、このブログが少しでもお役にたてれば幸いです。

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第一種住居地域の木造3階建て(SE構法)の住宅『カフェのある家
この住宅の建つ埼玉県は、高さ制限が東京都ほど厳しくないので、高さ方向を活かした住まいが計画しやすい地域です。高さ10m以下(軒高9m以下)の規定を守りつつ、道路斜線は天空率緩和を使ってクリア。断面をスキップフロアの構成として、天井高さに変化をつけたり、ロフトを設けたり、床面積以上の広がりと変化のある住宅を実現しました。
>>カフェのある家 設計・工事記録

家を建てる時の土地探しのポイント まとめ
家を建てる時の土地探しのポイント15 その3
家を建てる時の土地探しのポイント15 その2
家を建てる時の土地探しのポイント15 その1
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著者情報

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石井 正博 + 近藤 民子 いしいまさひろ こんどうたみこ

設計事務所アーキプレイス

「敷地とライフスタイルを活かした家づくり」をテーマに、暮らしやすさ(温熱環境・家事動線・収納計画など)、デザイン、コストのバランスのとれた質の高い家づくりを建て主の方と一緒にめざします。

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