住まいに木を使うということ 無垢材から木質建材まで @小林真人
建物はきちんと素材感を備えたもので包まれると心身ともに心地よいものです。
心身ともに、というのは、素材の質感や機能は私たちの視覚・触覚に留まらず心理的環境、空気環境、あるいは資産性といったことにまで影響を及ぼすからです。そういった素材感や機能を備えたものとして、木材は私たち日本人にとって馴染み深く一番の定番材料でしょう。
日本古来の木の使い方は角材や板材に製材された無垢材を家の構造体や仕上げ材として用い、さらに細かい加工をして建具や家具などにも利用してきました。石材を主たる材料にしていた西欧の人から『日本の家は木と紙でできている』と表現されるほどに、木材を主たる材料に建物が建てられていたわけです。
私たちに馴染みの深いこの木材も現代では工業的な加工や処理を施すことで、驚くほど多彩で多様な展開を遂げているのをご存知でしょうか?
代表的な例をいくつか挙げてみます。
集成材 : 無垢材・間伐材の断面寸法の小さなものを製材し接着接合させたもの
合板 : 薄くスライスした単板を繊維方向がクロスするように重ね、一枚の板に貼り合わせたもの
練付材 : 木を薄く大根の桂剥きのように削いだり薄くスライスしたものを合板やMDFの基材に貼り付けたもの
OSB : 削片状にした広葉樹を積層・プレスして板状にしたものパーティクルボード・MDF : 木片や木質繊維を樹脂を加え熱圧成形した板材
人工木 : 木粉を樹脂と固めたもので、変形を防ぎ強度を上げるためにアルミ材を芯材に使用したものなどもある
こういったものを総称して木質建材といいます。
私は常に素材感・質感を大切に考え材料を選定していますが、それは木材・石材などの天然のものだけにあるのではなく、金属やコンクリートなどの工業材もそれぞれ独自の素材感・質感を持っているといえるでしょう。同様にこれは木質建材にもあてはまると思います。
木質建材の多くは経済性やエコあるいは無垢材にはない機能・性能を求めてできあがったものなので、まずはその点を評価すべきなのですが、同時に素材感・質感という視点でも天然のものにはない独特で魅力的なものが多く存在していると思います。
こういった視点も含めて素材を考えると、天然材から加工材までその選択肢はおおいに広がるでしょう。それらを上手に選定し組み合わせることで、互いの質感・素材感を際立たせ引き立て合い、より多様で心地よい空間づくりに役立てられるのではないでしょうか。[初出:31会マガジン Vol.4 2015 Spring WOOD くらしを楽しむつくり方]
株式会社 小林真人建築アトリエ
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