住宅密集地の木造狭小住宅で日差しを取込みリビングを明るくする屋根
東京の住宅密集地にお住まうご家族からいただいたご相談は、既存の家が1階リビングに日差しの届かないので明るいリビングにしてほしいというご希望の建替え相談でした。
日差しを住まいに取り込むために周囲の家より屋根を突き出させて、リビングを2階に配置して、日差しがリビングに届くようにしました。
既存の1階から2階に配置したリビングに日差しを取り込むために突き出した屋根は、建築法令の規制によって下の断面図の通り、上空に屋根が突き出る鋭角な刃物の様になりました。
これは建築基準法による高さ制限の中で残った部分で出来た形とも言えます。
建築基準法の建物高さ規制は、以下のものです。
- 絶対高さ規制
- 軒高さ規制
- 道路斜線規制
- 北側高度斜線規制
- 日影規制
建物は敷地に定められた「用途地域」の種別によって建物の床面積や高さに規制が定められています。(その他にも当該市町村による条例で定められた高さ規制もありますので注意が必要です。例:風致地区条例による高さ規制)
絶対高さ規制
用途地域の種別によりその地域全体で建物の高さそのものの規制が定まっている場合があります。
例えば、「第一種低層住居専用地域」では他の高さ規制に関係なく、高さ10m以下にしなければならない規制があります。
今回は「第一種中高層住居専用地域」で絶対高さの規制はありませんでした。
軒高さ規制
建物の屋根を支えるための柱と柱をつなぐ横架材を「軒(のき)」と呼んでいます。この軒高さを規制しています。
「第一種低層住居専用地域」では、軒の高さを7メートル以下と規制されています。
今回は「第一種中高層住居専用地域」でこの規制はありませんでした。
道路斜線規制
敷地は道路(建築基準法で認められた道路)に2メートル以上接していなければなりません。道路の接した箇所の道路の反対側から用途地域ごとに指定された角度の斜線内に建物を収めなければなりません。
ただ、建物の外壁面が接する道路線より後退した寸法だけ、反対側からの斜線が始まる地点も後退できる緩和措置があります。
今回は、道路に接する箇所は、今回特有の「共有地」を挟んでいるので、道路斜線規制は受けませんでした。
隣地斜線規制
道路に接する敷地境界線以外は、隣地に接します。隣地境界線と呼びます。
隣地境界線からの高さ規制で、「第一(二)種低層住居専用地域」を除く地域にある規制で、例えば今回の「第一種中高層住居専用地域」では、隣地境界線よりまず垂直に20メートル上がりその点から勾配斜線が始まる規制で、その規制線より内側に建物を収めなければなりません。
今回は、建物規模が高さ10メートル以下になりましたので、隣地斜線規制の影響は受けませんでした。
北側(高度)斜線規制
「第一種中高層住居専用地域」から「第二種中高層住居専用地域」で規制されている「北側の隣地斜線制限」です。住宅の計画で規制の影響が大きいものです。
例えば、今回の「第一種中高層住居専用地域」は「第2高度斜線」が定められていて、北側の隣地境界線から まず垂直方向に5メートル上がりその地点から1.25倍の勾配の斜線の内側に建物を収めなければなりません。
この北側(高度)斜線規制は緩和措置がありません。
北側(高度)斜線規制の主旨は隣地の南側の日差しの差し込みを確保するためです。
日影規制
日影規制は、近隣周囲の敷地に一定時間以上の建物による影が生じないようにするために、建物高さを規制されるものです。
用途地域別に細かな規制内容が定められています。
例えば今回の「第一種中高層住居専用地域」では、高さが10mを超える建築物に規制が掛かります。今回の地域では「3時間/2時間(4m)」と指定されていて、これは 冬至の日の午前8時から午後4時までに、地面から4メートル高さ面に、敷地境界線から5m~10mまでの範囲は3時間、敷地境界線から10m超の範囲は2時間以内、計画建物による日影を落としてよい制限時間であることを意味しています。
今回は、高さが10メートル以下の建物なので、日影規制はありませんでした。