内科医院クリニックの待合室の工夫設計バリアフリーと高天井吹抜空調換気音響設計

湘南の大磯で代々内科診療を続けている「脇内科医院」様から、医院建物の一部を建て替えたいご相談をいただきました。

間取りプランを検討する際、医師先生から「医院では安心して診療を受けて元気になっていただきたい」という想いを頂き、医院空間で反映できる様に努めました。

安心して診療をお待ちいただく待合室

既存の医院とお住まいの間で今回建て替えられる医院は、その間で最大限面積を確保する方針で建物外形が定まって、おおよその待合室の広さが定まりました。

待合室は余裕を持った面積に広げたいですが、限界がありました。限られた面積に工夫を加えることにより待合室を支障をなくし豊かな空間にして、身体の調子を崩されて来院された患者様に安心して診療をお待ちいただく待合室を目指しました。

下足のまま 靴を脱がない

玄関扉までのアプローチは、神奈川県の条例「皆のバリアフリー街づくり条例」の指針に従って段差のないスロープになっています。玄関扉は引戸の自動扉になっています。

院内には靴を脱がずに下足のままにお入りいただく方式を継続されました。

スロープのアプローチは靴の裏に付いた土や雨水を落として落としてくれる役割にもなりました。

靴下足のまま医院に入ることは、

  • 床の段差が要らない
  • 出入口で靴を脱いだり履いたりする手間がない
  • スリッパなど他の患者様が履いた物を使わない

というメリットがあります。

多少でも患者様が煩わしいと感じる物を失くしました。

吹抜け空間と高窓

患者様に待合室を広く感じていただくために、待合室の天井を高くして吹抜け空間にしました。面積×高さ=容積 を大きくして、上部への開放感によって患者様と患者様との密度を薄らぐように設えました。

吹抜け空間の上部に採光用の窓を設けて、日中はふんだんの自然光を待合室に取り込んで自然な明るさの中で過ごせるようにしました。

吹抜け待合室の照明

天井高さが低い個室の照明は、天井面に照明器具を設置して照らして明るさを確保することがほとんどです。

ただ今回の天井が高い吹抜け空間では、天井に取り付けた照明器具では明るさが床面まで届きません。

そこで吹抜け空間が一様に明るい印象になるためには、壁面を明るく照らすことで明るい印象になれるようにしました。

壁面をムラなく一様に照らせる場所にライティングレール (可動式のスポットライトを取り付ける照明用レール) を取り付けて、レールにスポットライトを取り付けて壁面をムラなく一様に照らしました。

換気設備

容積が大きい待合室の換気は、窓を開ける場合と換気設備の2つが選べられるようにしました。

窓を開けて行う場合

吹き抜け上部の外壁面に窓を2面に設けました。これらを開けて上部に溜まった空気を排気します。下部の窓もしくは給気口を開けて外気を取り込む方式にしました。

機械換気設備による場合

天井面に排気用の器具設備を設置して、上部に溜まった空気を排気します。外気は下部の窓もしくは給気口を開けて外気を取り込む方式にしました。

換気方式を患者様の混み合いや空気の温度によって片方・両方選べられるようにしました。

温湿度調節のための空調エアコン設備

天井高さが高い吹抜け空間に対して「空調は効くか? 夏は暑く、冬には寒くにならないか?」というご懸念をいただきます。

そのご懸念には、

  • 建物の断熱性能を高くする
  • 吹抜け空間の空気の循環を十分に行う

と、ご懸念はなくなることを説明しています。

以下のような建物や設備の性能を整えると、高い天井空間でも良好な温度環境になります。

・室内の断熱材を高性能にする
( ▶︎▶︎ 関連記事「木造2階建て注文住宅吹抜けリビングのエアコンと床暖房とシーリングファン」)

・シーリングファンを設置して空気循環を行う
( ▶︎▶︎ 関連記事「和風二世帯住宅の内断熱発泡ウレタンと省エネ対策」)

そして、空調エアコンは強力な器具を1台設置してフル回転させるのではなく、小型の器具を複数台配置して弱い回転によって空気温度環境=温湿度調整を容易にしています。器具は特殊な機器ではなく、汎用機器を選んで機器代を抑えることにしました。

またエアコンを複数台設置する理由は、

  • 1台だけに集中した負担を掛けないで複数台に分担させる
  • 器具が故障した場合は他の器具が稼働して診療を中止させないようにする

を前提としています。

吹抜け空間の空気の循環

吹抜け空間の上下の空気を循環させるために、上部にファンを設置して空気を循環させました。

循環させる機器は、天井に設置する羽根扇=シーリングファンが選ばれました。

音の反響を抑える

待合室の床や壁の表面仕上げ材料は、清潔を維持するために清掃消毒が出来るように汚れが付きにくい材料が選ばれました。すると材料の表面はある程度硬くなる傾向になりました。

表面が硬い材料は汚れにくい性質を持ちますが、伝わる音については吸収せず反射させる性質があります。

待合室では患者様と受付スタッフが、また患者様と患者様が会話をします。会話の声は重なり合い、発せられた声は、壁や床に当たって反射します。音が吸収減衰されないと、音は響き渡ります。音が長く響き渡ると会話が聞きづらくなります。

音が反射しないように吸収させて響きを無くすために、直接触らない天井面の材料は吸音性能がある材料が選ばれました。

吹抜け空間と高窓

患者様に待合室を広く感じていただくために、待合室の天井を高くして吹抜け空間にしました。面積×高さ=容積 を大きくして、上部への開放感によって患者様と患者様との密度を薄らぐように設えました。

また吹抜け空間の上部に採光用の窓を設けて、日中はふんだんの自然光を待合室に取り込んで自然な明るさの中で過ごせるようにしました。

 

著者情報

北島 俊嗣北島 俊嗣

北島 俊嗣 きたじま としつぐ

株式会社北島建築設計事務所

お客様の貴重な財産である土地や建物を第一に守り、 より美しくデザイン性の高い豊かな建築環境を実現しています。

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