用途変更の建築確認申請手続きが必要な建物

建築の用途

建築基準法では、建物が建てられるときにその設計図を役所に届け出て、設計の内容が法の規制に沿っているかを確認することを定めています。この行為を「確認申請」と呼んでいます。

設計された建物はその使い方を分類するようになっていて、その分類を建築「用途」と呼んでいます。そしてその用途各々に必要な構造耐荷重や災害時に安全に屋外に避難できるための通路や設備の内容が定められています。

建築完成後、何らかの理由でその用途が変わる場合(例えば、事務所として使っていた場所を、物販店舗に変更する場合)、用途が変わっても安全に建物が利用できることを申請して役所の確認を得なければなりません。これが用途変更確認申請です。

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その場合、大きくは以下の2点についての内容確認が必要です。

構造耐荷重

建築基準法の構造指針では建物の用途別に、建物の床が最低限支えるべきの荷重を定めています。

・住宅・・・180kg/m2
・事務室・・300kg/m2
・教室・・・235kg/m2
・店舗・・・300kg/m2
・劇場・・・300〜360kg/m2
・車庫・・・550kg/m2

上記は最低限であり、個別の設計により割増し設計を行うことは可能です。

建物の用途変更を行うときに、当初設計された用途の耐荷重条件が、新たに変更される用途の耐荷重と比べて、同等かそれ以上であれば問題ありません。例えば、事務室 300kg/m2 → 店舗 300kg/m2 の変更は可能です。

しかし、耐荷重が上回ってしまう場合は、建物の耐荷重を増加させる工事をするか、耐荷重が掛からない使い方を限定することを証明して確認できるようにしなければなりません。(例として、共同住宅マンションの部屋を、店舗に変更したい時などです)

避難通路と設備

万が一地震や火災などの災害が起こったとき、建物内に居る人が安全に敷地外に避難できるように、以下の避難設備の要・不要と寸法や仕様が、用途別に定められています。

・間仕切壁の防火仕様
・内装の防火仕様
・階段の寸法・階段までの距離・階段の数と仕様
・廊下の幅
・排煙窓の大きさ
・非常用照明の数と仕様
・非常用進入口の数と仕様
・敷地内の避難通路の幅
・消防設備

用途変更により、設置することが必要な場合は工事が必要です。現実的に設置が可能な場合は容易ですが、設置が困難な場合は用途変更が不可になる場合があります。

用途変更が必要な用途

既存の建物の用途から、異なる用途に建物を変更する場合、以下の用途の場合は原則、用途変更確認申請の手続きが必要です。

 → 用途変更に関わる関連解説記事

・劇場・映画館・集会場
・病院(入院施設があるもの)
・ホテル・旅館
・共同住宅・下宿・寄宿舎(グループホーム)
・児童福祉施設(保育所・デイケア)
・学校・体育館・図書館
・博物館・美術館
・水泳場・スポーツ練習場
・百貨店・マーケット・物販店舗
・展示場
・飲食店舗
・キャバレー・クラブ・バー
・遊技場
・公衆浴場
・倉庫
・自動車車庫
・スタジオ

ただし以下の場合は、用途変更は不要です。

・用途変更する部分が100m2未満の場合(※↓)
・入院施設のない医院クリニック診療所

なお、上記に用途の記述がなくても同種用途と見なされる場合がありますので、もしご不明な場合はどうぞお問い合わせ下さい。

(※)また、令和元年6月末を目処に建築基準法が改正されて、用途変更申請手続きが必要な規模が100m2以上 → 200m2以上 に緩和される予定です。

 

北島俊嗣
北島建築設計事務所

 

著者情報

北島 俊嗣北島 俊嗣

北島 俊嗣 きたじま としつぐ

株式会社北島建築設計事務所

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